鼓膜形成手術について
鼓膜形成手術は、慢性穿孔性中耳炎(鼓膜に孔があいている単純な中耳炎)に対して行われる手術で、鼓膜にあいている穴を閉じることにより聴力の改善、もしくは耳漏れの停止を目的としています。
1990年ごろから行われるようになった手術で、従来数週間の入院期間が必要でしたが、日帰りで行うことが可能となりました。耳の後ろを1cm切開し採取した筋膜を生体接着剤を使用し鼓膜に植えることが可能となりました。
通常、数十分の短い手術で局所麻酔で可能な手術です。また、その成功率は、90%以上です。
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手術をする前に、手術後の聴力改善度を予測するための検査を行います。
※この改善度が高い例では手術により高い聴力改善が得られます。
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- 耳の後ろを麻酔し、1cmほど切開し筋膜を採取します。
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耳の中を綿球・ガーゼを用いて麻酔します。(15分ほど)
鼓膜の穿孔周囲を新鮮化するために数ミリ切除します。
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- 筋膜を穿孔に密着する形で留置し、最後に生体接着剤(血液製剤)で固定します。
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- 耳の後ろを縫合して手術は終了です。
注意点
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- まれに、麻酔薬が入ると数時間めまいが起こることがあります。(2~3時間で改善)
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- まれに、舌の前半分の味覚低下がおこることがあります。(2~3ヵ月で自然に改善)
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- 一週間後に抜糸します。
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- 数週間は、滲出液がでます。2回/週ほどで通院、消毒が必要です。
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- 2日間、抗生剤の服用が必要です。
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- 感染したり、鼻を強くかむと筋膜がズレ再穿孔を来たすことがあります。
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- 血液製剤の使用を希望されない方はこの手術は受けられません。
鼓室内チューブ留置術について
鼓室内チューブ留置術(チュービング)とは、中耳(鼓膜の裏)の気圧調節や分泌物の排泄は、耳管によって行われています。
滲出性中耳炎は、何らかの原因(子供ではアデノイド増殖症、慢性副鼻腔炎が多いです。)によって耳管の機能が障害されることにより発生すると言われています。
そのため、一時的に耳管の代わりに小さなシリコン製のチューブを鼓膜を介して入れ、換気や排泄を助け、その間に耳管や中耳の粘膜の病気の改善をはかる簡単な手術です。
- 鼓膜切開、耳管通気治療を2~6ヵ月ほどつづけても症状や鼓膜の所見が改善されないものに行われます。
手術の適応について
- ①
- 鼓膜を麻酔した後で、顕微鏡下で鼓膜切開(数ミリ鼓膜に小さな穴をあけます)を行います。
- ②
- 鼓室にたまった貯留液を吸引した後にチューブを鼓膜に挟みます。
- ※
- 聞き分けの良い子(4歳以上)なら、局所麻酔で可能ですので、5分ほとで終わります。
動いて操作ができない場合やアデノイドや口蓋扁桃の手術を同時に行う必要があるときには全身麻酔で行うことがあります。(その際は5日~7日間入院が必要です。)
手術方法
- チューブ留置後90%以上で聴力の改善を認めます。
効果
- 鼓膜が度重なる炎症で極めて薄くなっているときは、チューブが抜けた穴が長期間残存することがあります。
半年間、閉鎖傾向がなければ鼓膜形成手術を行えば、鼓膜の穴は塞がります。
※30分ほどで終わる日帰り手術です。
合併症
レーザー手術(下鼻甲介粘膜焼灼術)について
鼻つまりは鼻の粘膜がはれて空気の通り道が狭くなることで生じます。アレルギー性鼻炎に対するレーザー治療は、鼻粘膜の表面をレーザーで焼き、鼻つまりを中心にアレルギー性鼻炎の症状を軽減するものです。
・レーザーを鼻粘膜にあてることで鼻粘膜は組織変化が起こりアレルギー反応を起こしにくくなり、腫脹しにくくなることで鼻炎症状が改善されます。
・局所的な治療であるレーザー治療は、アレルギー性鼻炎の根本的な治療ではありません。薬を併用した治療が必要であったり、本治療の適応でない場合もあります。(蓄のう症(副鼻腔炎)、鼻たけ、鼻中隔彎曲症など別の病気がある場合は、レーザー治療以外の手術が必要な場合があります。)
手術方法について
1 局所麻酔(鼻の中に麻酔薬を浸したガーゼを入れる。約20分)で行ないます。
2 カメラ(内視鏡)で確認しながらレーザーを照射します。(片方で約5分間)
3 手術後は1回/週ぐらいで3,4回の通院が必要です。
4 治療効果が不十分の場合は、間隔をあけて数回焼灼術を行なうことがあります。
5 治療効果は永久的なものではなく、数ヶ月から数年で再発することもありま す。 (効果が減少した場合は繰り返し手術をすることにより同様の効果が期待出来ます。)
鼻茸摘出術について
鼻茸(はなたけ)とは、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)に伴って起こる疾患の1つです。
副鼻腔炎が長期間治らない時に副鼻腔の粘膜が肥厚して鼻の中に白いキノコのようなコブができます。
これを鼻茸あるいは鼻ポリープといいます。
鼻茸ができると、鼻の中の空気の通り道が狭くなり鼻づまり(鼻閉)を来たします。
鼻茸ができることによる鼻づまりは残念ながら薬の治療のみでは改善しないことが多く、外科的治療が必要となることがあります。
これを鼻茸摘出術といいます。
手術方法
- ①
- 鼻茸摘出術:鼻腔に飛び出した鼻茸を茎の部分で切除する方法です。(日帰り手術)
- ②
- 副鼻腔根本手術:鼻茸のみではなく根本の副鼻腔内の病的粘膜も同時に摘出する。(入院手術)
- ※
- 鼻茸摘出術で一時的に鼻閉は改善されますが、鼻茸の根が残るので数年から10年後に鼻閉が再発する可能性があります。再発を繰り返す場合には将来②の根本手術が必要となる場合があります。
麻酔について
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- ガーゼ麻酔を10分~15分、数回に分けて行います。(注射麻酔を併用することがあります。)
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- 鼻茸咬断器もしくはマイクロデブリッターという鼻茸を削り取る機械を使用して鼻の中から見える範囲の鼻茸をできる限り除去します。(出血が多い時は無理をせず手術を中断することがあります。)
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- 鼻茸の断端から出血が認められるときには、電気焼灼を併用します。
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- 止血を十分に確認した後で、止血用のスポンジを鼻の中に挿入し手術は終了です。
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- 念のため、手術後病院内で15分程度経過観察し帰宅していただきます。
手術後
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- 手術当日は、麻酔が切れる数時間後に出血する可能性があります。少量の出血なら経過観察でよいですが、特に喉に多くの出血が持続する場合は、すぐにご相談ください。
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- 手術後、数日で鼻内のスポンジは除去します。可能なら手術翌日にご来院ください。
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- 手術後2週間程度は、鼻の中の粘膜が腫脹します。よって、2週間は鼻閉が継続してもその後改善します ので心配はいりません。
鼻骨骨折整復手術
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鼻骨骨折は顔面の骨折の中で最も頻度が多いものです。
外からの力の加わり方(野球のボールや肘・膝が当たってなることが多いです。)によって変形の仕方は多様で、ハナスジが曲がったり、ハナスジが落ち込んだりします。
病態
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多くは美容的な問題から行います。
レントゲン写真で骨折が認められても、美容的な問題(鼻の変形)がなければ、保存的に経過を追って行くこともあります。
手術の適応について
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受傷後、2週間以内に行うことが多いです。
2週間までは、骨折した鼻骨の可動性があり、皮膚の切開を行わなくとも手術が可能ですが(非観血的整復)、2週間を超えると曲がった位置で骨折が固まり、皮膚切開をしないと整復手術(観血的整復)が出来なくなります。
手術時期
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小児では、全身麻酔が必要な事がありますが、通常、局所麻酔のみで手術が可能です。
鼻の中に局所麻酔剤を湿らせたガーゼを入れ麻酔を行います。
麻酔が不十分なときは、骨折部に局所麻酔剤を注射します。
麻酔方法
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剥離子という金属の薄っぺらな棒を、鼻の中から陥没した骨の下に入れ外力が加わったのと反対方向に力を入れ持ち上げます。
そのとき、整復されると、カチッという音がします。
再度、変形しないように、ギブスの目的で両方の鼻の中にガーゼを入れます。(2~3日後に抜きます。)
手術方法
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- ガーゼが入っている間は、鼻が詰まります。
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- 感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。
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- ガーゼを抜いた後、4週間は強く鼻を打つと再度変形を起こすことがありますので注意してください。
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- 出血は、ほとんどありませんが出血が止まらない時は医院までご連絡ください。